飛騨の地から夢舞台へ―小学6年生の教え子と歩む、盤上の「王道」

将棋

飛騨の地からプロを目指す熱き志―教え子との濃密な3時間レッスン

昨日、高山将棋教室の月例大会での出会いをきっかけに、新たな「教え子」との個人レッスンが始まりました。相手はプロ棋士を志す小学6年生の相田蒼太君。飛騨の将棋界に新たな風を吹き込むべく、私も「踏み台」になる覚悟で全力の指導を行いました。

会場に選んだのは、地域の中核施設として名高い「飛騨世界文化センター」です。

匠の技と現代建築の融合:飛騨世界文化センターの魅力

対局の舞台となったこの施設は、単なる公共ホールを越えた、飛騨の誇るべき文化拠点です。

  • 飛騨の山並みを象徴するデザイン                    一際目を引くのは、飛騨の深い山々をイメージしたダイナミックな屋根のライン。周囲の自然と調和しながらも、圧倒的な存在感を放っています。
  • 伝統の「飛騨の匠」を感じる構造                    内装や構造にはふんだんに木材が使用されており、足を踏み入れるだけで木の温もりと職人技術の粋を感じることができます。
  • 多機能を備えた複合施設                        最大2,000人規模のホールから、今回利用した「応接会議室」のような落ち着いた空間まで備わっており、文化発信・展示・会議と、あらゆるイベントに対応しています。

スタッフの方々の心遣いも素晴らしく、特に要望せずとも掲示板には「将棋教室」の案内が。1時間630円という手頃な料金で、静謐かつ品格のある対局環境を確保できるのは非常にありがたいことです。


母への進言:類まれな才能と「AIという真の師匠」

レッスンに先立ち、私はお母様にメールを通して大切なお話をさせていただきました。将棋を始めてわずか1年足らずで「将棋ウォーズ初段」に到達した蒼太君の才能は、間違いなく本物です。しかし、プロへの道は数千人の有能なライバルがひしめく険しい公道です。

私はお母様にこう伝えました。 「私の実力はアマ四段程度。彼が私との対局『だけ』で強くなろうとしても、私を超えることは困難です。

彼にとっての真の師匠は、今や私ではなく『AI』であるべきです。私は、彼がAIという膨大な知恵を吸収するための『通訳』に過ぎません。AIを師匠に据えることこそが、私を追い越し、プロへ至る最短ルートなのです」

また、同時に「引き際」についても触れました。この1年、全力で取り組んでみて、もし自分には才能がないと感じたり、プロは向いていないと思ったりしたなら、その時はスパッと諦めても良い。将棋で培った思考力は、別の道でも必ず武器になります。自分の可能性を試す「挑戦の1年」として、気楽に、かつ真剣に向き合ってほしいと願っています。


対局詳報:激闘と「王道の歩み」

当日は13時から16時までの3時間、感想戦を交えながら計3局をじっくりと指し通しました。プロを目指す蒼太君に対し、私も一切の手加減なしで挑みました。

第1局(向飛車戦):勝負どころの「読み」

私の向かい飛車に対し、蒼太君には中盤で勝ち筋がありました。下図の局面で▲2二飛成と踏み込んでいれば、先手優勢だったでしょう。感想戦では「勝負所こそ腰を据え、直感ではなく数手先まで読み切ること」を勝つための極意として伝えました。

この局面で▲4三歩成りとしたが、▲2二飛成り△同金からの▲4三歩成りが正解

第2局(三間飛車戦):邪道を捨て、王道を往く  

蒼太君は「鬼殺し」のような嵌め手で挑んできました。確かに攻めが決まれば破壊力はありますが、正確に受けられると自滅する戦法です。「こうした羽目手は上位者には通用しない。邪道を捨て、正々堂々と王道の将棋を指しなさい」と厳しく忠告しました。

△6五角で下手の攻めが不発に終わる。                                

第3局(角落ち戦):惜敗を糧にする敗因分析

私の無理攻めを見事に受け切り、一時は蒼太君が優勢となりました。しかし、たった一つの受け間違いから私が細い攻めを繋いで逆転。彼にとっては非常に惜しい一局となりました。渡した棋譜を読み返し、どこで間違えたのか、敗因を徹底的に探るよう伝えました。

△6四飛に▲7九桂と受けた局面。上手の攻めが切れそうであったが、△6七銀成りの勝負手があった。以下▲同桂△7六金と進んだ局面が下手受け辛い。


成長の記録:棋譜を残すルーティン

私は、本気で強くなりたい教え子との対局では、必ず全ての棋譜を記録し、手渡すことをルーティンにしています。今回もスマホアプリの「棋譜ノート」で記録し、PCで印刷する際は「Kifu for Windows V7」のアプリを使用しました。

数年後に振り返ったとき、当時の自分がいかに考え、どこで躓いていたかを知ることは、大きな自信と成長のバロメーターになります。この「客観的に自分を見つめる習慣」こそが、将来の大きな財産となるはずです。


将棋AIの活用術:スマホ版からPC版へ移行すべき理由

現在、蒼太君は「ぴよ将棋」などのスマホアプリを活用しています。私も実際にインストールし使ってみましたが、非常に使い勝手が良く、初心者・中級者が手軽に検討を行うにはうってつけのツールです。しかし、将来プロを目指すのであれば、急ぎはしませんが、PC版の将棋GUI環境(「将棋GUI」+「水匠5」などの最強エンジン)へ移行することを強く勧めます。

スマホ版とPC版における「解析深度」と「効率」の決定的な違い

なぜ、多くのプロ棋士や奨励会員がスマホではなくPCで研究を行うのか。そこには明確な理由があります。

  1. 演算能力(探索深さ)の差 :スマホのCPUとPCのCPUでは、1秒間に計算できる局面数が桁違いです。スマホでは「見逃し」てしまうような高度な手も、PC版(特に高性能なPC)であればより深く、正確に読み切ることができます。
  2. マルチウィンドウによる多角的分析:PC版GUIでは、複数のエンジンを同時に動かしたり、過去の膨大なデータベースを瞬時に参照したりすることが可能です。画面の狭いスマホでは不可能な「情報の同時処理」が研究の質を変えます。
  3. 水匠5等の「最強エンジン」の真価: 現在、世界トップレベルの評価を受ける「水匠5」などは、PC環境でこそその真価を発揮します。プロのスタンダードとなっている環境に早くから慣れることは、そのまま「勝負の土俵」をプロのレベルに引き上げることを意味します。

現在はスマホ版でも十分な学習になりますが、上を目指す過程で必ず壁に突き当たります。その時、PC版という最強の武器を手にしているかどうかが、勝負の分かれ目となるでしょう。


飛騨から全国へ、そして未来へ

帰り際、お父様から「高山地区の小学生3名(森下君、相田君、下町君)で去年、小学生の岐阜県大会を優勝した」という耳寄りな情報を伺いました。今年の春も同じメンバーで県大会優勝、西日本大会へ出場、そして更なるその先の全国大会を狙っているとのこと。西日本大会でで準優勝もしくは優勝の成績を収めれば全国大会へ進めるとのこと。同じ学校の仲間で切磋琢磨し、県を制した彼らの実力は本物です。

蒼太君がいつか私を追い越す日を夢見て。このレッスンの記録は、彼のご両親の了解のもと、一人の少年の「成長の記録」として今後も配信していく予定です。目指せ、全国大会!そしてその先の大きな夢へ。

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