将棋AI革命の衝撃:AlphaZeroが切り拓いた新時代

人間を超えた知性との遭遇

将棋界は今、かつてないほどの変革期を迎えています。
その立役者は、ただの天才棋士ではありません。**人工知能(AI)**です。

私が再び将棋に本格的に向き合い始めたのは、わずか数年前のこと。
その間に、将棋を取り巻く環境は劇的に変化していました。とりわけ、AIの台頭が将棋の常識を根底から覆していたのです。


自分と将棋の距離が再び縮まったとき

私は20年ほど将棋から遠ざかっていました。
藤井聡太七冠のプロになって初戦から29連勝はさすがにニュースで知っていましたが、それ以外は将棋界の事情に疎いままでした。韓国の囲碁トップ棋士がコンピューターソフトに敗れたというニュースも記憶にあります。
そして今、将棋の世界に戻ってきて最も驚かされたのが、AIによる将棋ソフトの実力がプロ棋士を完全に超えているという事実でした。


将棋AIの急成長と、アルファゼロの登場

自分が知る限り、将棋界にAIが急速に普及したきっかけは、**AlphaZero(アルファゼロ)**の出現だったのではないかと思います。
最初に「AlphaGo(アルファ碁)」が囲碁界に衝撃を与え、続いて「AlphaZero」が将棋・チェス・囲碁の三大ボードゲームを制したことで、AIは“研究補助”の域を超え、プロ棋士を凌駕する存在となったのです。


以下、アルファゼロについて調べて見ました

1. AlphaGoから始まった革命

  • グーグル傘下のAI企業「DeepMind社」によって開発
  • 囲碁の棋譜15万局から3000万手以上を学習
  • 自己対戦を通じて100万局以上のデータを構築
  • 2016年、韓国トップ棋士イ・セドルに4勝1敗で圧勝

2. AlphaZeroの衝撃

  • 2017年登場。AlphaGoを超えるAIとして開発
  • 囲碁・チェス・将棋の3つに対応
  • 囲碁:AlphaGoを完全に凌駕。100戦100勝
  • チェス:24時間学習後、当時の最強AI「Stockfish」に28勝0敗72引き分け
  • 将棋:3日間学習後、最強AI「elmo(エルモ)」に90勝8敗2引き分け
  • 人間の棋譜や定跡を一切使わず、ルールだけを覚えて自己対戦で進化

3. AlphaZeroの強さの本質

  • 強化学習による教師なし自己進化型AI
  • 人間が思いつかない着手(創造性)
  • 横歩取りは不利と評価=「終わった戦法」
  • AlphaZero同士の先手勝率は約8割(後手の不利が数値化)

DeepMindとAlphaZeroの開発背景

  • DeepMindは2010年に設立。創業者デミス・ハサビス氏は囲碁少年チャンピオン
  • 2014年にGoogleが買収(約500億円規模)
  • 数十億円規模の研究費、専用AIチップ「TPU」、600名超の研究者が関与
  • ゲーム攻略は「汎用人工知能(AGI)」へのステップとして選ばれた

将棋界の未来とAIの共存

今や、AIはプロ棋士にとって不可欠な研究ツールとなりました。
AIと共に研究することが、**プロ棋士としての“標準装備”**になったのです。

  • 定跡や形勢判断がAI評価値に基づいて再定義されている
  • アマチュアも無料の将棋AI(やねうら王・技巧など)を自由に活用
  • 将棋は「記憶の勝負」から「解析力と柔軟性」の戦いへと変化

結び:AlphaZeroが示したのは“終わり”ではなく“始まり”

AIの登場は、将棋の“終わり”ではありませんでした。
それはむしろ、人間とAIが共に高め合う時代の幕開けです。

AlphaZeroが照らした未来には、未知の可能性が広がっています。
私はこれからも、その進化とともに将棋を楽しみ、学んでいきたいと強く思います。

将棋に“結論”が出る日は来るのか?

私たちはいま、人間がAIに教えを乞う時代に生きています。
かつては「人間のほうが上」とされていた将棋の世界でも、トッププロでさえ、AIから学ぶことに抵抗を感じないというのが現実です。
この状況は、すでにAIと人間が共存関係にあることを意味しているのではないでしょうか。

ただ、私にはひとつの懸念があります。
それは、将棋というゲームがAIによって完全に解明されてしまう可能性です。

AIがすべての定跡を解析し、
「この初手から最善手を指し続ければ、必ず先手が勝つ」
──そんな**“結論”が導き出される未来**が来てしまうのではないかと。

あるいは、将棋はその複雑さゆえに永遠に解明されない未知のゲームであり続けるのかもしれません。
その答えは、今の私たちには分かりません。

けれどもし、将棋に明確な結論が出てしまったなら──
人々の熱は冷め、将棋から離れていくのではないか
そんな一抹の寂しさを感じるのも、将棋を愛するがゆえの感情なのだと思います。

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