定年後の再出発と第二の職場
私は長年勤めた会社を60歳で定年退職しました。
退職後は特に予定もなく、静かな日々を過ごしていました。
しかし、ある日、知人である地元の道の駅の社長から声をかけられます。
「一緒に働いてみないか」という誘いでした。
そのご縁から、地元のレトルト食品工場で工場長として再び働くことになりました。
従業員はわずか7名ほど。
小規模ながらも、アットホームで温かい職場でした。
和気あいあいとした雰囲気の中で3年間勤務しましたが、やがて再び退職を決意します。
少しずつ時間を持て余すようになり、「次は趣味を活かした仕事をしてみたい」と思うようになりました。
そして自然に浮かんできたのが、長年親しんできた将棋でした。
スキルシェアサービス「サイタ」との出会い
その後、インターネットで「将棋を教える仕事」を探していた時に、「サイタ（Cyta）」というスキルシェア型レッスンサービスを見つけました。
ピアノ、英会話、カメラなど幅広い分野で講師を募集しており、将棋講師の募集枠もありました。
応募条件は「将棋三段以上」。
これは自分の実力でも十分に満たしていたので、迷わず応募しました。
面接はZoomによるオンライン形式で行われ、自宅で受けられる点が新鮮でした。
結果は合格。
こうして将棋講師として活動を始めることになりました。
将棋講師としての活動と指導方針
サイタでのレッスンは、集団授業ではなくマンツーマン形式です。
私はプロフィールに経歴や大会実績、将棋への思いを詳しく掲載しました。
それを見て興味を持った生徒さんが申し込んでくれる仕組みです。
会場はサイタ側が手配してくれました。
公共施設や公民館、商業施設の一室などを使用し、活動範囲は岐阜県と愛知県に限定。
最終的に10名ほどの生徒さんと出会いました。
生徒は全員30代以下の男性で、最年少は小学1年生。
指導内容は、駒落ち将棋・詰将棋・手筋の理解など、個々のレベルに合わせて構成しました。
レッスン時間は1回1時間が基本ですが、実際には1時間半〜2時間になることも多く、採算よりも“上達の喜び”を優先していました。
心に残る教え子との出会い
中でも特に印象に残っているのが、小学3年生の生徒です。
集中力が高く、質問の質も鋭く、教えるたびに私自身が刺激を受けました。
その姿を見て、「この子は将来、プロ棋士を目指せるかもしれない」と感じたほどです。
ただ、私は「プロになってほしい」というより、「本当に強くなってほしい」という思いで指導していました。
毎回が真剣勝負であり、互いに学び合う時間だったと今でも思います。
サービス終了という突然の別れ
しかし、順調だったレッスン生活に思いがけない知らせが届きます。
2020年7月、運営元のクラウドワークスから「サイタ」サービス終了の告知があったのです。
コロナ禍の影響で対面レッスンが難しくなり、2021年3月31日をもって全機能が停止しました。
延長やリニューアルも検討されていましたが、最終的には終了が決定。
私にとっては感謝と学びに満ちた2年間でした。
レッスンを通じて得たもの
サイタでの経験を振り返ると、多くの気づきと成長がありました。
まず、人と接する仕事を通して、自信を取り戻せたこと。
そして、生徒の上達を通じて、自分の将棋観も磨かれたことです。
さらに、新しい挑戦に年齢は関係ないと実感できました。
将棋を教えることで、人生そのものの楽しさを再発見できたのです。
この経験は、私にとってかけがえのない財産となりました。
まとめ
サイタでの講師経験は、定年後の私に新しい生きがいをもたらしました。
これからも、将棋を通じて誰かに学びや喜びを届けられるような活動を続けていきたいと思います。した。機会があれば、今後も将棋を通じて誰かと関わっていけたらと願っています。
