将棋で検証する脳の老化 ― 年齢に抗わず考え続ける生き方

将棋

はじめに ― 年齢とともに生まれる不安を感じている方へ

このブログをご覧になられているご高齢の皆様。
年齢を重ねるにつれて、体の衰えを感じたり、以前より疲れやすくなったり、あるいは「考える力が落ちてきたのではないか」「集中力が続かない」といった不安を覚えることはありませんか。

物忘れに限らず、判断が遅くなった気がする、気力が湧かない、何かに挑戦すること自体がおっくうになる――そうした小さな違和感が積み重なって、「もう年だから仕方がない」と自分に言い聞かせてしまう方も多いと思います。

もし、そんな思いを少しでも抱えているなら、この先をぜひ読んでみてください。私自身の経験を通して、何か一つでも感じ取っていただけたなら、これ以上の喜びはありません。


ブログを始めた原点 ― 定年後に芽生えた一つの問い

私がブログを書き始めたのは2019年、64歳で定年退職したことがきっかけでした。時間ができたことで、若い頃に夢中になっていた将棋をもう一度、本格的にやろうと思ったのです。

私は将棋が本当に好きで、もう50年以上、将棋を指し続けてきました。20歳から30歳頃までは、のめり込んでいたと言っても過言ではありません。ところが帰省してからは対局相手にも恵まれず、しばらく将棋から離れていた時期もありました。

それでも再び将棋に向き合える環境が整ったとき、心の中に一つの問いが生まれました。

脳は年齢とともに本当に退化するのか。


将棋で確かめたい ― 脳は衰えるのか、それとも鍛え直せるのか

久しぶりに将棋を本気で指してみた私は、実力がそれほど弱くなったとは感じませんでした。むしろ、「まだまだ戦える」という感触があったのです。

ならば、年齢を理由に「衰えた」と決めつけるのではなく、将棋を通して自分の頭脳で確かめてみよう。もし結果を出せるなら、それは「脳が衰えていない」ことの一つの証明になるはずだ。そう考えて、ブログを通して記録を残すことにしました。


実戦の結果が示す現在地

その後、私はできる限り多くの大会に出るようになりました。飛騨地区の大会では、出場6回のうち5回で優勝、準優勝が1回。成績としては良好な部類に入ると思います。

ただし、県大会となるとまだまだ高い壁があり、理想には届いていません。課題は残っています。けれど少なくとも、年齢を重ねたからといって「将棋が弱くなった」という感触は私の中にはありません。まだまだ伸び盛りだとさえ思っています。


記憶力について ― 大会で起きた具体的な出来事

自分の記憶力についても、若い頃と比べて大きく落ちたとは感じていません。その根拠として、はっきり「事実」として書ける出来事があります。

たとえば、第三期飛騨将棋名人戦に参加したときのことです。私はその大会で指した3局について、帰宅してから記憶を頼りに棋譜を起こし、ブログ記事として記録しました。自分が指した手はまだしも、相手が指した手まで思い出して並べ直すのは簡単ではありません。集中して指した内容が頭に残っていなければ、最後まで形にはならないはずです。

もちろん完璧を保証する話ではありませんが、少なくとも自分の中では、こうした経験の積み重ねが「年齢=記憶力の一方的な低下」ではないことを示していると感じています。

第三期飛騨将棋名人戦 に参加して ーの詳細はこちら


将棋は脳と心を鍛える

将棋は集中力、判断力、記憶力、そして精神力を総動員する競技です。勝てば嬉しいし、負ければ悔しい。悔しさを抱えながら次に向けて工夫し、研究し、また盤に向かう。

将棋は単なる勝負ではありません。自分の弱さや限界と向き合う場でもあります。だからこそ私は、将棋を「脳」と「心」を鍛える道だと感じています。


月例会で感じたこと ― 年齢を超えて続く真剣勝負

12月14日(日)に高山市民会館で開催された12月度の月例会に参加してきました。2クラスに分かれて対局が行われ、私は上位クラスで3勝1敗でした。最初に負けてしまい、今回は優勝は無理かなと思っていましたが、全勝者がいなかったため同率首位となり、年功者の私がお情けで優勝という形になりました。そして、最後の対局相手が原田さんでした。対局後に少しお話しする機会があり、驚いたのは、原田さんが約20年前の飛騨地区の赤旗の大会のことを覚えておられたことです。私は当時のことをすっかり忘れていたのですが、決勝戦で当たり、そのときは原田さんが私を破って優勝されたそうです。よく覚えておられると感心しました。

原田さんは当時かなりの強豪だったようで、県代表として全国大会への出場経験もおありとのこと。御年66歳になられても小学生に二枚落ちで教えている姿を拝見したこともありましたが、実際に指してみても終盤まではどちらが勝ってもおかしくない局面が続き、指した感じでお強いことがすぐに分かりました。

ところが残念なことに、原田さんは3年前に大腸の病気を患い、今でも後遺症に苦しんでおられるとのことでした。お気の毒に思う一方で、高齢になっても将棋に真摯に取り組む姿を見せられて、私自身が勇気づけられる思いがしました。


これは先月行われた飛騨竜王戦三番勝負の表彰状です。

病気について ― 目的は最初から変わっていない

ここで、病気について一度整理しておきたいと思います。
私がブログに向かうきっかけとなったのは、最初から一つだけでした。

年齢を重ねても、脳は本当に劣化するのか。
このことを、将棋を通して証明したい。

その思いでブログを書き始め、今に至るまで、その決意にブレはありません。

確かに、ブログを始めた当初は普通に健常者でしたが、この過程で心臓、胃、涙管、前立腺といった大病を経験しました。
しかし、それらはあくまでも人生の途中で生じた出来事であり、
ブログの目的そのものを変えたわけではありません。

病気を理由に後退するつもりはありませんし、
将棋から離れる理由にもなりませんでした。
むしろ、どのような状況にあっても「考えることをやめない」
その姿勢こそが、この検証の本質だと感じています。

私にとって将棋は、年齢や環境に左右されず、
脳が今も機能し、応え続けているかを確かめるための場です。
その目的は、今も変わらず、これからも変わりません。


終わりに ― 初心忘るべからず

年齢に抗うのではなく、受け入れながら考え続ける。
それが私の将棋であり、これからの生き方だ。

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