AI将棋が進化する今、私は一つの疑問を抱きました。
それは「なぜ将棋ソフトは創作詰将棋が苦手なのか」ということです。
今回は、その理由を分かりやすく解説します。
現状の将棋ソフトの限界
1.評価関数に基づく最適化の限界
まず、将棋ソフトは「評価関数」を使って局面を数値化します。
そして、その値をもとに最善手を探索します。
この仕組みは、実戦ではとても効果的です。
しかし、詰将棋の創作には向いていません。
なぜなら、詰将棋では美しさや意外性などの主観的な要素が重要だからです。
これらを数値化することは難しく、ソフトが魅力的な作品を作るのは容易ではありません。
2.創造性の欠如
さらに、現在の将棋ソフトは「既存のデータ」と「明確なルール」に従って動きます。
つまり、自ら新しいテーマを生み出す創造力がないのです。
そのため、既存の定跡を応用することは得意でも、まったく新しい発想を要する創作詰将棋は苦手です。
この点が、ソフトの限界を示しています。
原因:弱いAIと強いAIの違い
次に、AIの仕組みそのものを見てみましょう。
将棋ソフトが創造性を持てない理由は、「弱いAI」と「強いAI」の違いにあります。
弱いAI(Narrow AI)は、特定の作業に特化しています。
与えられたルールの範囲内でのみ動作するため、自由な発想はできません。
将棋ソフトは、この弱いAIに分類されます。
一方で、強いAI(General AI)は人間のような柔軟な思考を持ちます。
未知の状況でも対応でき、学習を通じて自ら発想することが可能です。
将棋ソフトが創造性を得るには、この強いAIへの進化が必要なのです。
なお、昨年7月26日の最初のブログ「【弱いAIから超知能へ】AI技術の現状」でも、このテーマを紹介しました。
興味のある方は、ぜひそちらもご覧ください。

将棋ソフトに創造性を持たせるための道
では、どうすればソフトは創造性を手にできるのでしょうか。
ここでは、4つのアプローチを紹介します。
1.ディープラーニングの導入
まず、ディープラーニングを活用する方法です。
AIが膨大な局面を分析し、そこからパターンを学ぶことで柔軟な判断が可能になります。
この仕組みにより、評価関数に頼らない新しい発想が生まれるかもしれません。

2.自己対局による強化学習
次に、自己対局を繰り返す方法です。
AIが自ら学び、未知の局面に挑むことで、独自の戦略を見つけることができます。
このプロセスは、創造性の向上に直結します。

3.多様な評価基準の導入
また、「美しさ」や「意外性」を評価基準に取り入れることも大切です。
これにより、ソフトは単なる正解探しではなく、芸術性を意識した判断が可能になります。
結果として、創作詰将棋でも魅力的な作品が期待できるでしょう。
4.人間との協働
さらに、人間との協働も欠かせません。
AIが提案した手順を人間が取捨選択し、磨きをかけるのです。
この協働作業によって、より完成度の高い詰将棋が誕生します。
結論:将棋ソフトの創造性の未来
結論として、将棋ソフトが創造性を得るには、技術だけでは不十分です。
人間の感性や価値観を理解し、それを再現する力が必要です。
そのためには、自然言語処理や感情認識などの分野も組み合わせる必要があります。
やがて、AIが独自の発想で詰将棋を創作し、人間とともに新しい世界を築く日が来るでしょう。
将棋ソフトの創造性をめぐる挑戦は、人間とAIが共に生み出す新しい価値の出発点です。
今後の進化と研究に、いっそうの期待が高まります。
【次回へ続く】


