金山巨石群を後にして―尽きない疑問と連絡帳が呼び覚ました探究心

身体障害者記録

現地を離れても、終わらなかった思考

帰路についても消えなかった関心

金山巨石群を後にし、帰路についた今も、私の中でこの場所への関心は消えることがありません。それは単なる観光の余韻というより、現地に立ったことで生まれた疑問が、今なお頭の中で動き続けているからです。

一般的に、多くの観光地は訪れた瞬間が感情のピークとなり、帰路につくにつれて記憶が整理され、やがて収束していくものです。ところが、金山巨石群は明らかに違っていました。帰宅した後のほうが、むしろ考える時間は増え、思考は静かに深まっていったのです。

この地に立った瞬間に生まれた、二つの素朴な疑問

心に浮かんだ最初の違和感

現地に立ったとき、私の心に真っ先に浮かんだ疑問は、極めて単純でありながら重いものでした。

  • 疑問① なぜ古代人は、この地を選んだのか               まず思い浮かんだのは、場所の選定理由です。周囲を見渡せば、似たような山や谷は他にも存在します。それにもかかわらず、なぜ「ここ」でなければならなかったのでしょうか。地形、方位、自然現象、あるいは精神的・宗教的意味。こうした要素が複合的に重なっていた可能性も否定できません。
  • 疑問② 巨石はどのように運ばれたのか                 続いて浮かんだのが、巨石の運搬方法です。これらの巨石を、どのような手段を用いて正確な位置に移動・設置したのでしょうか。現代の常識に照らせば、重機なしでこれほどの巨石を動かし、しかも精度よく配置することは、どう考えても「不可能」としか思えません。

再訪で確信した「あり得ない」という感覚

初訪問時は圧倒されるだけだった

初めて訪れたときは、ただ圧倒されるばかりで、冷静に考える余裕はありませんでした。しかし、二度目に訪れて配置や周囲の地形を落ち着いて見渡したとき、その違和感は、はっきりとした確信へと変わりました。

あり得ない。絶対に不可能だ

この言葉は、単なる感情的な驚きではありません。むしろ、理屈で考えれば考えるほど説明が破綻していくのです。それでも、巨石は現にそこに存在している。その動かしようのない事実だけが、目の前に残りました。

連絡帳との出会い――生の声を知れる喜び

何気なくテーブルの上に置かれていた一冊の記録

前回の訪問時、現地に置かれていた「連絡帳」の存在に気づきました。何気なくページを開いたその瞬間、思いがけずうれしい気持ちが湧き上がってきました。

そこに記されていたのは、形式的な解説文でも観光パンフレットの言葉でもありません。実際にその場に立った人が、その瞬間に感じた率直な「生の声」でした。

他の人は、ここで何を感じたのだろうか。」 この問いは、単なる好奇心を超え、知ること自体が楽しいという探究心へと変わっていきました。

同じ考えを持つ人はいるのか

さらに、読み進めるうちにもう一つの思いが浮かんできました。この記録の中に、自分と同じ考えを持った人はいるのだろうか、という点です。巨大さに圧倒され、「あり得ない」と感じ、なぜここにあるのかと考え込む。こうした思考の流れは、決して私一人のものではなかったのです。

「もったいない」という感情が行動を生んだ

消えてしまうには惜しい声

連絡帳を読み進めるうちに、次第に「もったいない」という感情が強くなっていきました。これほど多くの生の声が、この場所に置かれたまま時間とともに風化してしまうのは、あまりにも惜しいと感じたのです。

もちろん、連絡帳そのものを持ち帰ることはできません。とはいえ、その内容だけでも記録しておきたい。そう考え、私は全ページをスマートフォンで撮影することにしました。これは単なる記録作業ではなく、この場所で交わされた多くの「感性」を、改めて受け止め直すための大切な儀式でもありました。

分析という、純粋に楽しい時間

整理して見えてきたもの

帰宅後、撮影した28枚分(56頁)の手書き記録をPCに取込み、AIに分析させました。要点を抽出し、傾向をまとめるまでに要した時間は、わずか2分半。

しかし、重要なのはスピードではありません。読み返し、分類し、共通点を見つけていく時間は、単なる作業ではなく、純粋にワクワクする思考の時間でした。数字を出すこと自体が目的ではなく、人の感じ方に現れる「共通の真理」が浮かび上がることこそが、何よりも面白かったのです。

連絡帳56頁の分析結果:記述が多い順【ベスト10】

※ 同義語・言い換え(例:大きい/巨大/HUGE など)は同一カテゴリとして集約。

1)圧倒的に大きい・想像以上のスケール (写真・映像とのギャップへの驚き。全体の核となる第一印象)

2)神秘的・不思議・説明できない (理屈を超えた存在。自然物以上の何かを感じている)

3)パワーを感じる・力をもらった (心身への影響を自覚。明確なスピリチュアル体験)

4)なぜ?どうやって?という知的疑問 (縄文人・古代人への問い。思索型観光の典型)

5)また来たい・何度でも来たい (再訪希望。一度で終わらない場所という認識)

6)初めて来たが感動した (初訪問者の衝撃。初見殺し的なインパクト)

7)心が整う・癒された (精神的回復・内省。単なる観光以上の効果)

8)家族・子どもと来た (子どものイラストや感想。世代を超えた体験)

9)全国から来た (三重・神奈川・大阪・鹿児島など、広域からの吸引力)

10)整備・説明への感謝 (運営や保存活動への高い評価)

ベスト10各項目の【確認件数(概数)】

※同義語・言い換えを統合した「意味単位」でのカウントです。

順位内容カテゴリ確認件数(概数)備考
1位大きい・巨大・スケールが違う60件以上ほぼ全ページに複数
2位神秘的・不思議・異世界40件前後直接表現+比喩含む
3位パワー・力・エネルギー25〜30件「感じた」が多い
4位なぜ?どうやって?20件前後知的疑問型
5位また来たい・再訪20件前後季節違い含む
6位初めて来たが感動15〜20件初訪問明記
7位癒し・心が整う15件前後精神面
8位家族・子ども15件前後イラスト含む
9位全国から来訪15件前後地名明記
10位説明・整備への感謝10件前後ガイド記述

「パワースポット」という言葉の意外な真実

興味深い事実として、「パワースポット」という特定の単語自体は、1件も確認されませんでした。しかし一方で、以下のような表現は非常に多く見られます。

  • パワーを感じた
  • エネルギーをもらった
  • 心が整った
  • 導かれた気がする

つまり、安易な流行語は使わずとも、体験としては明確に「力」を感じ取っているのです。また、金運や恋愛成就といった俗的なご利益表現がほぼ皆無であり、精神的・内省的な作用が中心である点も、この場所の大きな特徴と言えるでしょう。

海外からの来訪:国別・内容整理

連絡帳には、国際色豊かな記述も残されていました。

  • アメリカ(アラスカ): 巨大さと自然のスケールへの驚き
  • 香港: 静けさと神秘性への感動
  • 韓国: 日本の自然・精神性への敬意
  • ドイツ: 「今まで見た中で最も美しい場所の一つ」との評価

彼らに共通するのは、宗教・歴史・自然を、一つの総合的な文化体験として深く受け止めている点です。


七十年生きてきて、初めて感じた「不可能」

私はこれまで七十年間生きてきましたが、体験してきた出来事は、最終的にはすべて説明のつくものばかりでした。一見不思議に見える現象も、突き詰めて考えれば、必ず物理的・合理的な説明に行き着くからです。

ところが、今回の金山巨石群だけは違いました。どれだけ理屈を積み重ねても、頭に浮かぶのは「不可能」という言葉しかありません。

まとめ―尽きない探究心

ここまで振り返ると、金山巨石群が与えたものは、単なる驚きではなかった。
疑問が生まれ、それが共有されていると知り、さらに説明できない感覚が強く残った。

分からないからこそ考える。
不可能に見えるからこそ掘り下げる。
この姿勢は、将棋で培ってきた思考のあり方とも重なっている。

答えがすぐに出なくても構わない。
この「分からなさ」そのものが、思考を鍛え、前に進む力になっている。

金山巨石群は、結論を与える場所ではない。
しかし、尽きることのない探究心を呼び覚ます場所である。

この旅は、まだ終わっていない
次は、この「不可能」に、もう一歩踏み込んでみたい

次回につづく

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