ヤフーニュースに感じた違和感
数日前、ヤフーニュースに「がんの5年生存率の推移」が掲載されていました。
とてもわかりやすいデータで、医療統計として価値のある内容でした。
しかし、実際に胃がん(ステージ3b)を経験した私には、どうしても拭えない違和感がありました。
記事には「胃がん63.5%」という全国平均の5年生存率が示されています。
一見すると希望の持てる数字ですが、私はその数値を見た瞬間に思いました。
「その数字は、私の現実とは違う」
なぜなら、がんにはステージⅠ〜Ⅳという段階があり、生存率はステージごとに大きく異なるからです。
掲載されている数値は、すべてのステージをまとめて平均した“全体値”にすぎません。
例えば胃がんなら、
- ステージⅠ → 90%以上
- ステージⅣ → 5〜10%
と、同じ胃がんでも生存率に極端な差があります。
こうした数値をひとつにまとめると、患者本人の実情とは大きくズレが生じます。
特に進行がんの患者が本当に知りたいのは、全国平均ではなく 自分がいるステージの数字 です。

がん種ごとの5年生存率の推移
まず、ヤフーニュースでも紹介されていた「がん種ごとの5年生存率の変化」を整理しておきます。
医学の進歩により全体として生存率は向上していますが、それでも依然として厳しいがん種もあります。
こうしたデータを見ると、平均値だけではがんの実態は語れない ことがよくわかります。
| がん種 | 性別 | 1993–96年 | 2012–15年 |
|---|---|---|---|
| 前立腺 | 男性 | 59.4 | 98.3 |
| 甲状腺 | 男性 | 89.6 | 98.7 |
| 女性 | 94.6 | 97.2 | |
| 皮膚 | 男性 | 82.3 | 92.0 |
| 大腸 | 男性 | 63.4 | 69.2 |
| 女性 | 64.8 | 72.5 | |
| 胃 | 男性 | 60.1 | 66.4 |
| 女性 | 63.1 | 69.6 | |
| 肺 | 男性 | 19.8 | 32.8 |
| 女性 | 33.7 | 48.8 | |
| 肝臓 | 男性 | 27.7 | 52.1 |
| 女性 | 20.8 | 43.0 | |
| 子宮頸がん | 女性 | 77.7 | 72.5 |
| すい臓 | 男性 | 5.7 | 10.2 |
| 女性 | 5.7 | 10.2 |
胃がん:ステージ別 5年生存率の「現実」
胃がんを正しく理解するには、ステージ別の数字を見る必要があります。
(2012〜2015年:国立がん研究センター)
| ステージ | 5年生存率(%) |
|---|---|
| Ⅰ | 92〜95 |
| Ⅱ | 60〜80 |
| Ⅲa | 45〜55 |
| Ⅲb | 20〜35 |
| Ⅳ | 5〜10 |
私はこのうち ステージⅢb でした。
「胃がん63.5%」という全国平均と比べると、自分の置かれた状況がどれほど違うかが明らかです。
ステージⅠ(92〜95%)とステージⅣ(5〜10%)では、実に80%近い差があります。
それを「63.5%」というひとつの数字で表してしまえば、現実の厳しさも希望の大きさも、どちらもぼやけてしまいます。
ここに、私が感じた統計の落とし穴があります。私はこのうちステージⅢbでした。
「胃がん63.5%」という全国平均と比べると、自分の立っている場所がどれほど違うかがわかります。
他のがんとの比較から見えるもの
ステージⅢに絞って、他のがんと比較してみます。
がん種別:ステージⅢの5年生存率(目安)
| がん種 | ステージⅢ(%) |
|---|---|
| 胃がん | 20〜55(Ⅲa〜Ⅲb) |
| 大腸がん | 60〜70 |
| 肺がん | 15〜30 |
| 膵臓がん | 5〜10 |
| 前立腺がん | 約95 |
同じ「ステージⅢ」でも、がん種によってここまで差があります。
この表からも、「がん全体の平均」「胃がん全体の平均」では、自分の置かれた状況は見えてこないことがわかります。
私のがんは「胎児性希少がん」+ステージⅢb
組織検査の結果、私の胃がんは一般的な腺がんではなく 胎児性の希少がん でした。
- 症例数が少ない
- 進行が早い
- リンパ節転移しやすい
- 再発率も高い傾向
さらにステージⅢb。決して軽い状況ではありません。
ただ、医師からはこう言われました。
「ステージ3bなら、生存率35%前後が参考になる」
「最初の1〜2年を越えると予後は安定しやすい」
発見のきっかけ──人間ドックから高山赤十字病院へ
胃がんが見つかったのは、地元の下呂温泉病院での人間ドックでした。
「ちょっと気になる影があるので、精密検査を受けてください」
この一言から、私のがんとの闘いが始まりました。
高山赤十字病院で行われた内視鏡検査では、医師が慎重に病変部の組織を摘み取り、生検(病理検査)へと回されました。
数日後、私と姪2人が同席した説明で、医師から穏やかな口調でこう告げられました。
「胃がんです」
その瞬間、胸の奥がすっと冷えたような感覚を、今でもはっきりと覚えています。
かつては本人に告げられなかった“がん”──告知の変化
私が若い頃は、がんと診断されても本人には告知されず、家族だけが知らされるという時代がありました。
- 本人には「胃潰瘍ですね」「しばらく入院しましょう」と伝える
- 実際には家族にだけ「がんです」と説明する
そんな事例を、私の周りでも何度か見聞きしました。
その後、1990年代後半〜2000年代にかけて「インフォームド・コンセント」が医療現場で徹底され、患者本人の自己決定権が尊重されるようになりました。
現在は、病名・治療方針を本人にきちんと説明するのが当たり前になっています。
今回の私の場合も、担当医からの指示により、姪2人に付き添ってもらいながら告知を受けました。
一人で聞くのではなく、支えてくれる人が同席してくれたことは、心強かったです。
手術前の不安と、東北へのひとり旅
手術日が2022年10月6日と決まり、手術までに少し時間の余裕があったため、9月の下旬に私は思い切って東北地方へ1週間のひとり旅に出ました。
「これが最後の旅行になるかもしれないな」
と、ふと思った瞬間もありました。
しかし、この旅は私にとって
- 自分の心と向き合う時間
- 「覚悟」を静かに固める時間
となり、手術に向かうための大切なステップになりました。
胃の2/3摘出、そしてS-1による抗がん剤治療
手術は予定通り行われ、胃の2/3を摘出しました。
術後の補助化学療法として、S-1(経口抗がん剤)を1年間服用しました。
幸いにも、
- 強い吐き気なし
- 食欲低下なし
- ひどい倦怠感もほぼなし
- 将棋、ブログ、散歩も継続可能
と、非常に恵まれた状態で治療を終えることができました。
「抗がん剤=つらい」というイメージを持っていましたが、私の場合は日常生活を大きく崩さずに済んだことが、心の支えになりました。

病気を“必要以上に考えない”という選択
がんと向き合う中で、私が意識してきたのは、
病気のことを必要以上に考えない
という姿勢です。
不安にとらわれて一日中ネット検索をするよりも、
- 適度な運動
- 将棋で頭のトレーニング
- ブログを書くことで脳を活性化
といった「前向きな時間」に意識を向けるよう心がけてきました。
病気のことを完全に忘れることはできませんが、人生の主役をがんに譲らないこと。
それが、私なりの生き方です。
「3年の壁」を越えたという事実
ステージ3bは、特に術後1〜2年の再発率が高く、医師からも
「最初の2年がとても重要です」
と繰り返し言われていました。
だからこそ、3年を無事に越えられた今、私は統計以上の大きな意味を感じています。
医学的には、再発リスクが最も高い期間を過ぎ、安定期に入ったと言われます。
もちろん5年の節目までは気を抜けませんが、方向としては確実に「光の方へ進んでいる」という実感があります。

宮城県の生存率が日本一高い理由と、検診の力
ユーチューブのニュースでは、胃がんの5年生存率が
- 全国平均:63.5%
- 宮城県:73.4%
と紹介されていました。
宮城県が全国より約10ポイントも高い理由として、
胃がんの精密検査受診率が全国で最高レベル
であることが挙げられていました。
- 検診を受ける人が多い
- 要精検の人がきちんと精密検査に進む
- その結果、早期発見・早期治療が増える
という流れが、数値として表れているのだと思います。
私自身も、人間ドックでの早期発見が命をつなぎました。
このことからも、検診の力を強く実感しています。


だからこそ伝えたい「検診は命を守る投資」
胃がんは、早期発見なら9割以上助かる病気と言われています。
だからこそ、この記事を読んでくださっている皆さんにお伝えしたいのは、
- 年1回の胃カメラ・バリウム検査を受ける
- 少しでも気になる症状があれば、迷わず受診する
- 自分だけでなく、家族にも検診の大切さを伝える
ということです。
検診は「面倒なイベント」ではなく、
自分と家族の未来を守るための投資だと、私は身をもって感じています。
病魔を超えて、将棋で輝き続ける
胃がん、前立腺がん、狭心症によるステント手術、涙管詰まりの手術。
私はこれまでに4回の手術を経験してきました。
それでも今、こうしてブログを書き、将棋大会にも参加できています。
その一局一局、そして一日一日が、私にとっての「生きている証」です。
将棋・ブログ・日々の運動は、私にとっての心の薬です。
これからも、
「病魔を超えて将棋で輝く」
というテーマのもと、同じ病を抱える人たちに少しでも希望を届けられるよう、前向きな日々を積み重ねていきたいと思います。
少しでも誰かの励みになるよう生きていきたい。

